教室ブログ

手塚國彦展

投稿日時:2009/04/22(水) 08:53

 日本人は印象派の絵が好きなのに,どうして,日本の画家は印象派のような絵を描いてこなかったのでしょう。ちょっと不思議な感じもします。

 以前,高階秀爾氏と馬渕明子氏の参加した討論会があって,そのとき質問してみました。お二人の答えは同じでした。日本人がいきなり印象派のような絵を描くのは無理だったでしょうとのこと。基本になる技法を身につけてないと,とても描けないということでした。
 高階先生は,印象派の画家に直接教わった日本人画家がいないと指摘され,馬渕先生もモネもルノワールも偽物が極めて少ない,偽物はバレてしまうということでした。日本人に限らず,相当のレベルにないと描けないようです。

 かつて,山﨑先生に,このお話をどう思いますかとお聞きしたことがあります。それは無理だよ,絵の具の性質や使い方がわかってきたのも戦後ずいぶんたってからだからね,とおっしゃって,基本となるレベルが相当高くないと,印象派風にも描けないとお話くださいました。

 もしかしたら,いまの日本で,一番印象派に近いところにいる画家は,手塚國彦という人かもしれません。大胆なようで繊細,鮮やかな色彩が圧倒的です。

 キャンバスの中で,翳っている空間が静かにたたずみながら,一方で光に照らされた領域は,自然な輝きをみせています。光の部分が浮き出してはいけないのです。そうでなくて,陰をたずさえながら,その領域にたしかに光が当たっているのを感じさせることです。光の領域が,浮き上がったような,切り取られたような感じを与えることなく,影とともに,そこになくてはいけないのです。
 キャンバス上の色が質量を持って,そこに空間を定着させています。

 ここまでの到達は,最近のことのように感じられます。
 手塚先生も,いままで思い違いをしていたことに,徐々に気づいてきたと語っていました。

 4月20日から26日(日) まで,10時から19時(最終日は17時まで),東京駅の八重洲地下街にある「ギャラリー八重洲」で手塚國彦展が開かれています。

 海外の風景も,日本の風景も,花も果物も,みな美しい色で実在感ある絵になっています。もはや偶然の成功ではありません。
 たとえば,ベネチア(VENEZIA)の翳りゆく中で輝いている風景です。光と陰がお互いを引き立たせています。陰のなかの緑に,穏やかな光があたっているところが,ひっそりとして美しく,静かな実在感を与えているのです。
 そして,「紫果」の清新さ。イチジクの美しい色が宝石のようでもあります。

 繊細で奔放で,軽やかで重々しくて,独特の世界が普遍性を獲得していくことでしょう。

 お出かけの際には,サインをご覧ください。「Teduka」でなくて「Tézoukak」です。世界に飛び立つ準備はもうできています。

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